ごあいさつ
認知症で日常生活自立度が低く、社会性において
セルフコントロール(自己制御)が出来なくなり、
息子の私の名前すら呼べない父の介護に私が実家へ戻ったのは2年前の事です。
せっかく介護に携わるのであればと姫路の介護福祉士の専門学校に通い始めたのですが、
その実習に参加した施設で、車椅子洗浄のボランティアがあり、
その時にひらめいたのがこの【チェアーズウォーカー】です。
父の介護をし始めた時に、なぜまだ自分で歩ける人間が
車椅子に座りっぱなしなのだろうかと以前から疑問に感じていました。
「このままでは機能低下が進行して今歩ける足も歩けなくなって、
それどころかもっと重篤な症状を起こしてしまうのではないか?」
案の定1年目の年の瀬に気管支性誤嚥性肺炎を併発してしまいました。
1か月に渡る入院中の絶飲食で父はみるみるやせ衰え、退院時には担当医に
「もうお父さんは歩けないでしょう」とまで言われてしまいました。専門学校を辞めて、母と二人の自宅介護と支援者によるリハビリでスプーンすら持つ事が出来なかった父が今では自分で箸を持ち、チェアーズウォーカーを使って自由にリビングを歩き回っています。私は認知症は病気ではなく人間が長生き出来るようになったために
見えるようになった機能低下の一つと考えます。それは社会生活から徐々に引き離されてゆくような寂しい感じもうけますが、
終末期を迎えるにあたっての自然現象であり、安らかに永眠する一歩であると考えれば介護する人間にとっては少し気が楽になります。しかし、社会性が薄れる事で周囲が過敏な違和感と目を離せないという恐怖心で、
今までは薬や物理的束縛をもって対応するしかありませんでしたが、この発明が私の父と
同じような悩みをお持ちのご家族が安心して介護が出来るようになれば、この上ない幸せです。